新しい薬が病院や一般で使えるようになる前の段階として、「治験」という重要な臨床試験があります。
治験は主に病院やクリニックなどの医療機関で行われ、実際の患者さんに協力していただきます。
医療機関で治験を主体的に行うのは治験を担当する医師ですが、すべての対応を医師がするわけにはいきません。
そこで、CRC(治験コーディネーター)という、治験を補佐するスタッフがつきます。
ここではその「CRC(治験コーディネーター)」のお仕事についてご紹介します。
CRCは治験の補佐・調整する重要なスタッフ
CRC(治験コーディネーター)は医療機関側の立場で治験をサポートします。
治験に参加する患者(被験者と呼びます)さんとの調整はもちろん、医師の補佐、製薬会社とのスケジュール調整などもCRCのお仕事です。
どんな人がCRCとして働いているの?
治験を実施するために重要なスタッフであるCRC。
医療に関する知識はもちろん、医師や被験者とのコミュニケーション能力が求められる仕事です。
具体的にはどんな方がどんな仕事をしているのでしょう?
CRCの雇用体系は2パターンあり、「病院に所属する院内CRC」と「SMOに所属する派遣CRC」の2つに分かれます。
病院に所属する院内CRC
大学病院などでは院内の看護師、薬剤師、臨床検査技師をCRCとして配置していることが多いです。
治験専属で働く病院もあれば、通常業務と兼務する病院もあります。
また、複数の治験を担当することも多いです。
SMOに所属するCRC
クリニックや診療所、医院などの小規模な医療機関では、SMOに所属するCRCが派遣されることがほとんどです。
SMOとは治験施設支援機関のことで、治験を行う医療機関をサポートする専門の会社です。
SMOには治験の事務手続きを行うスタッフやCRC業務を行うスタッフが所属し、契約した病院に派遣されます。
SMOに所属するCRCには、元看護師、元臨床検査技師という方が多く、看護師からのキャリアチェンジが全体の40%と最多。
ですが、特に医療資格がない方もSMOのCRCとして勤務しています。
これは、SMOのCRCは医療行為をできないためです。
院内CRCとSMOのCRCの違い
院内CRCは病院に医療従事者として雇用されますが、SMOのCRCはSMOに雇用されます。
そのため、院内CRCは採血などその病院における医療行為ができますが、SMOのCRCは医療行為ができません。
これは派遣法の定めによるものです。
看護師や臨床検査技師からCRCに転職する方はこのことをよく認識しておく必要があります。
院内CRCは治験コーディネーター業務のみを行う場合が多く、SMOのCRCは治験の事務的な仕事も行うことがあります。
SMOのCRCとして病院に派遣される場合、業務内容を病院とSMOとの契約でしっかりと明記しています。
また、院内CRCは転職しない限り別の病院に行くことはありませんが、SMOのCRCは複数の病院を担当することも多いです。
CRCの仕事内容
CRCは、被験者・担当医師・製薬会社の間で調整を行います。
それもただ調整を行うのではなく、治験の重要な実施基準である「GCP」という規制を守らなければなりません。
このGCPに沿って、「治験が適正に行われているかどうか」を医療機関側の立場でチェックします。
具体的に何をするの?
でもチェックといっても実際にどんなことをしているのでしょう?
もう少し具体的に見ていきます。
治験開始前の準備
治験を始める前には、医師をはじめ関連部署のスタッフが集まり、各々の役割分担の決定や、治験を実施するうえで想定される問題点とその改善策、スケジュールについて最終的に確認するためのミーティングを行います。
CRCはこのミーティングを行うために各部署のスケジュールを調整するなど事前準備を行ないます。
患者さんのリクルート
実施予定の治験の内容を医療機関の内外にお知らせし、治験の対象となる患者さんの募集を行なうことをリクルートといいます。
各病院では何名の被験者を治験に参加していただくかという「契約症例数」が決められています。
契約症例数を満了できるかどうかを気にする医師や病院では、このリクルートに力を入れます。
CRCはリクルートの際、治験担当医師と一緒に被験候補者の確認をします。
候補となる患者さんの情報は、個人が特定されないよう番号で管理されます。
インフォームドコンセントの取得支援
患者さんか治験に参加するためには、患者さんご自身が説明について納得し、自由意思で同意書にサインをする必要があります(インフォームドコンセントの取得)。
CRCはインフォームドコンセントの際、目的や手順、メリット・デメリットを患者さんにわかりやすく説明し、不安や疑問点についても説明します。
患者さんが自分の意思で治験への参加可否を判断できるよう支援を行います。
被験者の情報記録・安全性管理の支援
治験では治験で決められたデータの取得はもちろん、治験薬との因果関係を問わず全ての有害事象(被験者にとって好ましくないできごと)の記録を行い、報告するよう決められています。
CRCはこの記録の支援を行います。
また、万が一治験中に健康被害が発生した場合には、直ちに担当医師と治験依頼者(製薬会社)へ報告しなければなりません。
健康被害が認められ「補償」の対象となる場合、補償関連の手続きを含め速やかな対応を行ないます。
CRA(臨床開発モニター)への対応
治験を行う際、製薬会社側の窓口はCRA(臨床開発モニター)が担当します。
CRAは治験開始前の準備にはもちろん、定期的に医療機関を訪問しGCPの基準を守って治験が行われているかをチェックしに来ます。
このCRAとの調整もCRCの役割です。
CRCも多忙だがやりがいがある
医師・患者さん・院内の各部部署のスタッフ・CRAと、さまざまな人とコミュニケーションを取るCRCのお仕事も多忙と言えます。
治験特有に生じる大量の書類の作成に頭を悩ませる方も多いです。
給与面では、看護師に比べると低い水準になる可能性もあります。
夜勤はありませんが、人によっては給与が減ったことを不満に思う方がいるのも事実です。
しかし、開発過程とはいえ新薬を使うことで患者さんの症状改善に寄り添えるのは医療に関わるものとしてうれしいことです。
「新薬の開発に関わる」という点も大きなやりがいです。看護師からCRCの転職をお考えの方は、よろしければこちらも読んでみてくださいね。
CRCに転職するのは子育て世代の方、看護師としての体力に限界を感じたという方が多いです。
SMOのCRCの場合は派遣法上医療行為をできない点にも注意が必要です。
看護職の方でCRCに応募してみたい方は、看護系サイトでは求人がほとんど扱っていないため、リクルートエージェントなど一般の転職エージェントを利用するのがおすすめです。
リクルートエージェントを利用したことがない方は、無料登録フォームを送る際に「現在看護師でCRCを希望している」と備考欄に書いて送ると希望が伝わりやすいので一言添えてみてくださいね。